日本の土木を語る上で外せない文献がある。それが、今回紹介する「日本百名峠」だ。
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目次
①日本人と峠の関わり
②文献としての「日本百名峠」
③まとめ
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①日本人と峠の関わり
実は峠というのは、日本人の文化に非常に深く関わっているのだ。それは、日本の地形が影響していると言える。
まず、日本は国土の7割が山地であるという非常に山がちな地形である、という特徴がある。これは西洋など平坦な陸地が多く、国境が「川」だったりするような諸外国に比べ、「峠」が国境になることが多かった。
したがって、「峠」というのは自らの来し方を振り返り、新たな国に思いを馳せる___そんな場所になっている。それは峠を題材にした作品(例:「天城峠」であれば、「天城越え」・「伊豆の踊り子」など)が多く生まれていることからも読み解くことができる。
②文献としての「日本百名峠」
井出孫六氏が書かれた「日本百名峠」は、無数にある日本中の峠から100に厳選された非常に濃度の濃い文献となっている。
この本、定価で3800円もするんですよ!最初買おうとしていたので、プレミアがついてとんでもない値段になっていたところ、近所の図書館に1冊だけ存在していたので何度も繰り返し借りております。
日本百名峠が書かれた背景としては、「日本百名山」ブームとなっていた当時、このように日本人に根ざした「峠」が次のブームとして来る…みたいな思惑もあったようだ。
中身はこんな感じ
著者いわく、一都道府県につき1つ以上は峠を割り当てているが、中部地方(特に長野県)からの選定が多くなり、西日本についてはあまり選定できなくて残念である、とのことである。
また、沖縄県に関しては、そこに山があれば海で向こう側に行けば良い__的な考えがあるのかもしれない、とのことで、そもそも「峠自体が見当たらない」という状況が発生している。
③まとめ
峠というのは、日本人の文化であり、歴史である。
古いものでは古代のムラ・ムラの交易に始まり、中世に開通したものでは、いわゆる街道となり、現代の「国道」の元になっているものも多い。
人が移動するとき、その向う側にある何かとこちら側を繋ぐことになる。それは常に人間同士のつながりであり、その営みの中に「峠」は自然と介在していた。
逆に言えば、自然に負け、峠を越えられなかった道は文化を伝播しない。そして、その峠は廃れる。峠は、日本人同士をつなぐ重要なインフラであったわけだ。
そして、これからも日本人は峠道を使い続ける。その悠久の流れのノスタルジーにどっぷりと浸かることができる、本書を一度読んでみてはいかがだろうか。